値段の決め方。原価とは何かの意味から販売価格の中身、計算まで。
投稿日:2018年3月24日 更新日:
値段の決め方ってなんでしょうか。値付け(プライシング)ともいいます。英語で簡単に”sale price(セールプライス)”となる値段の決め方とは、価格設定、売価設定、販売価格設定と様々な呼び方があり、私たちがフリマで売ったり、買ったりする値段でもあります。そして、そこには必ず原価という言葉が付いてきます。この原価には、製造原価、仕入原価、売上原価から原価率の計算まで何を指し示すのかで原価が含まれる言葉の意味が変わってきます。さて、私たちが普段モノの購入やサービスの提供を受けた場合、その売価(販売価格)には何が含まれていてその値段になっていますか。売価や値段、販売価格があるということは、決め方があり、誰かが決めた訳です。同時に企業には利益がなければならないので、当然それは含まれているとイメージできます。ここでは、販売経験などなく、0(ゼロ)からモノを製造したりして販売しようとしている初心者でも新製品を企画している企業でもモノやサービスを市場に売り出そうとした場合の値段、売価の決め方、その販売価格の要素である原価とは何なのか、原価率とは何なのかを簡単に整理していきます。
一般的な値段(売価/販売価格)の決め方、計算式
値段(売価/販売価格) = 原価 ÷ 原価率
値段(売価/販売価格) = 原価 ÷ (1−予定利益率)
これが一般的に値段を決め方をする際の計算式です。早速ですが、”原価”が出てきました。このように、切っても切り離せない用語なのです。上下段どちらも数字を当てはめると”視点”の違いだけで同じ計算式となります。
まずは、上段の式。
例えば、あなたはお店を経営していて、あるモノを“仕入れる”費用が300円だった場合を考えます。メーカから300円で仕入れ、メーカーの店頭販売価格(お客様/消費者の購入金額)は、1,500円だったとします。
この300円を『仕入原価』と呼びます。つまり、仕入れるためにかかった費用金額です。
そして、販売価格が1,500円とわかっているので、
1,500円(販売価格) = 300円(仕入原価) ÷ 原価率
1,500円(販売価格) x 原価率 = 300円(仕入原価)
原価率 = 300円(仕入原価) ÷ 1,500円(販売価格)
原価率 = 0.2
%(パーセンテージ)に直せば0.2 x 100 = 20%です。
これは、1,500円(100%)のうち、20%(0.2/300円)が原価で80%(0.8/1,200円)が利益となるということです。%(パーセンテージ)でない場合は、原価(0.2)+利益(0.8)=1となり、下段の式の”1”の意味がわかるのではないでしょうか。
下段の式で確かめます。
1,500円(販売価格) = 300円(仕入原価) ÷ (1−0.8)
1,500円(販売価格) = 300円(仕入原価) ÷ 0.2
1,500円(販売価格) = 1,500円
ここでの“予定利益率”は、販売価格と仕入原価が把握できているので、計算できるのです。
また、原価率の計算式がわかりました。
原価率 = 原価 ÷ 売価(販売価格)
さらに、これが1個売れたとします。お客様から1,500円もらいます。この売れたモノに対しての”原価がいくらか?”という考え方を「売上原価」と呼びます。
その時は、
原価率 = 原価 ÷ 売上高で計算式を変化させます。
『売上原価について』→ 損益計算書の基礎
次に、あなたはアイデアを思いついて製造して販売しようと考えました。実際に製造したところ、そのモノを“製造する”費用が500円だったとします。そして、「いくらで売ろう?」と考えました。
この500円を『製造原価』と呼びます。つまり、モノを製造するためにかかった費用金額です。
「80%利益にしたいな。。。」「いや、70%かな。。。」などと考える訳です。
仮に”80%にしよう”としたとします。この”80%にしよう”が、「予定利益率」となります。
販売価格 = 500円(製造原価) ÷ (1−0.8)
販売価格 = 500円(製造原価) ÷ 0.2
販売価格 = 2,500円
2,500円で販売できれば、販売価格に対しての利益率は80%となり、逆に原価率は20%となります。
利益率についての詳細は、下記を参考にしてください。
『利益率と粗利率と原価率』→ 〜率の意味とは
先に取り上げた例の”仕入原価”は、既に完成されたものを仕入れて販売する方法のときの呼び方です。あなたがモノを買うことが”仕入れ”と捉えても良いです。そして、それを個人でフリマで売ろうとする時に考えるのが、”販売価格”となるのです。
しかし、”これから”モノ、サービスの製造販売を考える際に出てきた“製造原価”。この製造原価とそのモノをお店やネットで販売するときの大きく捉えた販売価格を決める上での“原価(総原価)”の要素、中身は何でしょうか。
原価の要素、中身とは
製造原価
モノを製造するためにかかった総額
簡単に言えばこうです。
- 材料費
- 容器代金
- 箱、ラベルなどのパッケージ代金
- デザイン料
- 製造に関わる外注費用全般
これは、自社で製造を行わない、個人で製造を行わず、外注した場合に考えるべき製造原価です。近年では、ODMやOEMの方法などにより、大手企業でも取り入れられています。
一方、自社で開発、製造から販売までの全てを行う場合または製造業の現場では、材料費、労務費、経費というカテゴリーで製造原価が計算されます。
ここでは、外注としたとして説明していきます。
製造以外の原価
製品を販売するためにかかった費用
簡単いえばこうです。“営業費”と呼んだりします。
“販売費および一般管理費”
と会計上言われる項目になります。“販管費”とも呼ばれます。
- 広告宣伝費(CMや雑誌掲載など)
- 人件費(営業マン)
- 販売手数料(大手ネット販売サイトやオークションにお店を持つ場合)
- 運送費
これは主なもので、その他、通信費、減価償却費、役員報酬などがあります。
総原価とは
製造原価 + 販売費および一般管理費
つまり、販売価格を決める際には、これら全てを集計した上で、1つ当たりの原価を計算し、そこから利益を出す金額を上乗せします。モノやサービス1つには、これらを考慮した上での販売価格となっているのです。また、私たちがモノやサービスを購入した際には、これらの一部を負担していることになります。
先例の”利益80%くらいかな”や”原価は20%にしたいな”というのは、あくまで、”作る側”の考え方なので、注意が必要となります。
もし、販売費および一般管理費を考慮しないとどうなるでしょうか?
少し細かいですが、損益計算書上、”売上総利益(粗利益)”と”営業利益”と分かれており、その間にこの販売費および一般管理費の項目があり、営業利益 = 売上総利益 − 販売費および一般管理費となるのです。10万円の売上総利益があって販売費および一般管理費が20万円だったら、マイナスになってしまいますよね。
『売上原価について』→ 損益計算書の基礎
販売価格の決め方で注意すべき点
- お客様が求める値段相場になっているか
- 他社同種の製品とかけ離れていないか
作る側視点も必要ですが、モノを購入したり、サービスを受けるのは私たち消費者です。よほどの唯一無二の強みがあるのであれば別ですが、最大に考慮するべき2点です。これには、マーケティングが必要となり、ウォンツとニーズという考え方もあります。
値段の決め方の専門用語
値段の決め方は、“価格設定”や“売価設定”と呼ばれます。その方法手法が、専門用語として存在します。
コストプラス(Cost Plus/CP)法
原価を基準に設定する方法
(製造や販売に直接関わる費用+企業の運営にかかる費用+利益)=製品価格
とするものです。
ターゲットプロフィット(Target Profit/TP)法
予め目標となる利益を決めて、その利益を得るように設定する方法
パーシーブドバリュー法(Perceived Value/PV)法
お客様、消費者が得られる価値に合わせて設定する方法
Perceived(パーシーブド)は”知覚”の意味で、PVを直訳すると「知覚価値」となります。
この知覚価値とは、”見た目の価値”です。
価格がお客様の感じる値段と合っているか。
ということです。例えば、お客様が100円と思っているとすると、それを前提として、製造コストや利益を決めることで、売価が、100円前後になるというものです。
付加価値に近いかもしれません。
『付加価値』→ 付加価値って何?
ゴーイングレイト(Going Rate/GR)法
競合他社の売価をもとにして、自社製品の売価も設定する方法
市場価格に合わせるといえます。
シールドビット(Shield Bit/SB)法
自社製品の売価を競合他社より安く設定する方法
まとめ
値段の決め方について見てきましたが、製造に関わる部分だけが原価に含まれるわけではないことが理解できるのではないでしょうか。もちろん、この部分は注意しておかなくてはいけません。
そして、メーカーから仕入れをして販売する際には、売価に関しての裁量の余地はなく、利益を多く得るためには、仕入値での交渉となってしまいます。
しかし、利益を考える上で、作る側の視点も加味しつつ、実際に届けられる
“お客様が感じる値段相場”はより重要になります。
これを知るには、同業他社の日頃の市場調査や値段感をチェックしておくことが必要ですし、どこで売るのかも考えなくてはなりません。実際の販売価格を決めようとすると、様々な視点を考慮する必要があります。
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