人件費率の計算、労働分配率計算や人時(事)生産性と時給を考える

投稿日:2017年12月15日 更新日:

企業を悩ます人件費。計算目安として、労働分配率、人時(事)生産性の業界比率も存在しますが、各企業状況に即して目安を策定することが大事です。そして、付加価値額や付加価値率とは何なのでしょうか。また、外注する場合、人件費(会計上”外注費”)から”どれだけ売り上げなくてはならないか”を考えることもできます。特にポップアップストア(期間限定で即売を行う)などで販売スタッフを自社製品のために雇う場合には、より一層必要でしょう。予算内ではなく、売上高ありきできちんと生産性や分配を整理していきましょう。そのために人件費率はもちろんのこと、労働分配率や人時生産性、人時売上高をどうみていくかを計算から導き出していきます。

売上高人件費率とは

一般的に企業でいうところの”人件費”です。売上高に対する人件費の割合です。

売上高人件費率(%) = 人件費 ÷ 売上高 x 100

の計算式で表せます。

この人件費には、正社員など従業員の給与や賞与のみならず、福利厚生費、法定福利費、社会保険料、役員報酬、退職金等が含まれます。

分かり易いですが、売上高人件費率は、高ければ、会社の人件費の負担割合が大きいことを示し、逆に低ければ、会社の人件費の負担割合が小さいことを示します。ただし、高いから悪い。低いから良い。ではなく、自社の業種や規模により判断することが大切です。

また、売上高人件費率以外にも”人”に関する指標は、主に3つあります。

  1. 労働分配率
  2. 人時売上高
  3. 人時生産性

これらを一つ一つみていきましょう。

労働分配率とは

労働分配率とは、付加価値額に対する人件費の割合です。新たに生み出した価値(付加価値)のうちどれだけ人件費に分配されたかを示します。

ところで、「付加価値」ってなんでしょうか?

  1. 生産によって新たに加えられた価値。総生産額から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額。
  2. 特定の人・場所・施設や何かの商品・サービスなどに付け加えられた独自の価値

出典:Wikipedia

簡単に言ってしまえば、1,000円で仕入れたモノを1,500円で販売した場合、

付加価値 = 1,500円-1,000円 = 500円

この500円が付加価値となります。

あれっ!?何か気づきませんか?

売上総利益(粗利益) = 売上高 - 売上原価(仕入原価/製造原価)

つまり、

付加価値 ≒ 売上総利益 = 粗利益

とほぼ同義と捉えて間違いありません。

もし「付加価値率」を計算する場合には、

付加価値率(%) = 付加価値 ÷ 売上高 = 粗利率

となります。

粗利益詳細→ 利益率や粗利益率や原価率

売上総利益詳細→ 損益計算書(P/L)を簡単にわかりやすく見方、読み方を確認してみる

「付加価値」は、各省庁などで定義がありますが先の例で覚えておくのが良いです。詳細が必要な場合に参考にしてください。

『中小企業庁方式』

付加価値=売上高-外部購入価値(材料費、購入部品費、運送費、外注費など)

『日銀方式』

付加価値=経常利益+人件費+貸借料+減価償却費+金融費用+租税公課

『経産省方式』

粗付加価値=実質金融費用+当期純利益+人件費+租税公課+減価償却費

『財務省方式』

付加価値=役員報酬+従業員給料手当+福利厚生費+動産・不動産賃借料+支払利息割引料+営業利益+租税公課

そして、労働分配率を計算式にするとこのようになります。

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

付加価値 = 売上総利益 = 売上高 × 利益率

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 粗利益 × 100

自身の企業業種別の目安が気になりますよね。それらは、こちらを参考にしてみると良いです。

経済産業省のサイト

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/h27sokuho.html

上記サイトを参考にすると、売上高人件費率や労働分配率は、事業規模や業種等により異なりますが、労働分配率は40〜60%が多いです。

労働分配率が高すぎる場合は、利益に対して、人件費が高すぎる上に、付加価値を生み出せていない可能性や販売効率が悪い状況にあるのかもしれません。低すぎる場合は、利益に対して、従業員の給与水準が低く、労働環境が良くない可能性があります。会社がきちんと付加価値を生み出せているのかを知る指標となります。

人件費自体の問題と捉えるとアルバイト、パートの人数の問題なのか?役員報酬が高いのか?など。
そして、業界平均からかけ離れていたとしても、付加価値を改善しなくてはならない場合もあります。製造原価や仕入れ額、モノの販売価格やサービスの提供価格の見直しなど原因を探し出すことが必要です。

人時売上高とは

従業員一人の労働時間一時間あたり、どの程度の売上高が得られるかを表した指標です。

人時売上高(円/時間) = 売上高 ÷ 従業員の総労働時間

これは、導かれた数値が高いほど一人当たりの売上高が高いことになります。つまり、高いほど良いとされています。

人時生産性とは

従業員一人あたりの生産性、つまり、従業員一人の労働時間一時間あたり、どの程度の粗利益が得られているかを表した指標です。

人時生産性(円/時間) = 粗利益 ÷ 従業員の総労働時間

従業員の総労働時間なので、少ない人員、少ない労働時間で大きな粗利益が得られれば、必然的に良いとなるのがわかるのではないでしょうか。

*従業員とは*

社員、アルバイト、パートなど雇用契約によって、雇われ、業務に従事している人を指し、正規、非正規は問いません。

“人(販売員)”を外注するときには?

展示会や即売をする際、外注で販売スタッフを雇うことがあります。

会計上の勘定科目としては、”外注費”となりますが、その際”予算内”だけに注力せずに、自社として、”これだけの売上高を得る”ことを考えることが重要です。

つまり、”売上高ありきの人件費を考える必要がある”のです。

人時売上高や人時生産性を使い、売上高、粗利高を仮定して考えることもできます。その上で売上高人件費率を考えてみてください

「時給800円で売上が立たない5人」を雇うより、「時給1,200円で売上の立つ3人」を雇った方が良かったりします。

例えば、売上高100,000円(粗利益60,000円)、労働時間8時間とします。

「時給800円で売上が立たない5人」

5人 × 時給800円 = 1時間4,000円

4,000円 × 労働時間8時間 = 1日の人件費32,000円

売上高人件費率 = 人件費32,000円 ÷ 売上高100,000円 = 32%(0.32)

同様に、「時給1,200円で売上の立つ3人」

売上高人件費率 = 人件費28,800円 ÷ 売上高100,000円 = 28.8%(0,288)

となります。

これは、必ずしも人時売上高や人事生産性が高いからと言って、必ず”良”とはならないことを意味しています。

つまり、プロモーション同様

“費用”対”効果”

なのです。

『平均時給について』→ 従業員脳と経営者脳

『採用費用とは』→ 人一人を雇う費用について

まとめ

人時売上高や人時生産性は、一つ一つの指標に過ぎません。その上で、売上高人件費率など複数の組み合わせによって判断して、総合的に”最も良い”となる方向性を導き出すことが何より重要となります。

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