採用費用と売上は人一人を雇うのにいくらかかって、いくら必要?

投稿日:2017年12月21日 更新日:

「給料分働けばいいでしょ!」「えっ!?給料の2〜3倍稼がないとダメだよ!」。採用などにより人を雇う場合、企業側は、一体いくらの費用が必要なのでしょうか?また、どのくらいの売上を見込まなくてはいけないのでしょうか?人件費は経費になります。自身が転職などで月収○○円を希望するにも、「自分を雇うには・・・」と金額換算把握できていると良いです。給与を考える上で必要な項目、要素を挙げて考えていきます。また、その際に参考となる労働分配率や人時生産性、人時売上高についても簡単に扱ってみます。

必要費用の項目

早速ですが、人を雇う場合にはどれだけの人件費が必要なのでしょうか。その項目を列挙します。

  1. 給与(基本給+残業手当+役職手当+通勤手当+住宅手当+扶養手当など含む)
  2. 賞与
  3. 退職金
  4. 社会保険料(健康保険/介護保険/年金保険/雇用保険/労災保険)
  5. 福利厚生費
  6. 採用、研修費

給与

給与とは、基本給の( )内など手当を含んだ会社が支払う全てをいい、勤務時間に対する基本給と言われるものは「給料」と正式にはいいます。毎月支払われるお給料とその他です。手当類に関しては、企業により”有無”がある項目です。

『給与』『給料』の違い→ 給料と給与と賃金の違いは、取り扱う法律によって変わるの!?

賞与

ボーナスと呼ばれるものです。夏季、冬季、決算賞与などがあります。賞与も企業により”有無”がある項目です。

退職金

退職金制度も企業により”有無”がある項目です。昨今では、設けていない企業が多くあります。

社会保険料

社会保険料とは5つの”保険料”の総称です。一つ一つみていきましょう。

健康保険

会社員は、会社の健康保険(全国健康保険協会または保険組合)に加入して、会社と個人で費用を半分ずつ負担しています。保険証もらいますよね?

健康保険料 = 標準報酬月額(給与) × 保険料率

で算出します。

保険料率の詳細は、

http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150/h29/h29ryougakuhyou9gatukara

年金保険

厚生年金と呼ばれるもので、いわゆる”年金”です。

厚生年金保険料 = 標準報酬月額(給与) × 厚生年金保険料率

で算出します。

厚生年金料率の詳細は、

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/gakuhyo/index.html

雇用保険

常時、雇うことになる正社員は無条件で加入するもので、アルバイトやパートは、条件付き(一定基準を満たした場合)の加入となります。健康保険や年金はなんとなくわかるけど、”雇用保険”って何?

雇用保険は、わかりやすいのは、”失業手当”です。失業した場合の給付の他に、育児休業手当、介護休業手当に当たるものになります。

雇用保険料 = 毎月の給与総額 × 雇用保険料率

で算出します。

雇用保険料率の詳細は、

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

労災保険

正社員、アルバイト、パートに関わらず、無条件で加入になり、費用は全て”会社負担”になります。

労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率

で算出します。

労災保険料率の詳細は

http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/daijin/hoken/980916_3.htm

介護保険

従業員の年齢40歳以上が負担する保険です。

介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率

で算出します。

介護保険料率の詳細は、

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/1995-298

福利厚生費

結婚祝いや出産祝い、住宅手当、育児手当など、給与以外に従業員に支出する費用です。一定条件により経費にできます。

採用、研修費

求人情報誌や転職サイトへの広告費や採用直後に外部セミナーなどの研修を要する際は、その費用。

転職サイトなどで採用が成立した際は、その人材が会社と契約した給与の35%程度をその運営会社へも支払います。

採用費用の合計金額は?

人を雇う際、”給与”以外に各種の費用がかかることが、先述でわかりました。

具体例として、月収30万円で雇うとします。

各計算は割愛しますが、

  • 月収30万円(賞与なし)
  • 社会保険料合計、年額約55万円

*便宜上わかりやすくするため、端数、賞与は除いています*

ということは、月収30万 x 12ヵ月 + 社会保険料年間55万円 = 415万円

単純にですが、年間415万円かかるわけです。これに福利厚生などを加えるとざっくりと年間500万円程度になることが予想されます。

このように、人一人を雇うには、給与だけではなく付随して費用がかかっています。給料の2〜3倍を稼がなくてはいけないというのも強ち間違ってはいません。

また、年間500万で、採用した人が500万円の利益をあげたとしても、会社としては、儲けは、”0(ゼロ)”です。これでは雇う意味がありません。

給与はどこから支払われている?

従業員の給与は、会社のどこから支払われていますか?

「利益!」確かに間違いではありません。もう少し詳しくみると、『粗利益』です。

粗利益は、“売上高−売上原価(製造原価/仕入原価/変動費)”。つまりは、売上総利益、マージン、限界利益(貢献利益)から生まれています。この売上総利益から差し引かれる“販売費および一般管理費”に含まれるのが”人件費”だからです。

『売上総利益』について→ 損益計算書(P/L)を簡単にわかりやすく見方、読み方を確認してみる

例えば先例でいえば、

売上高1,000万円、売上原価500万円、粗利益500万円、人件費500万円だと会社としては、マイナスになる可能性を大いに含んでいるのです。

つまり、雇う人材は、粗利益(売上総利益/マージン/限界利益)以上を稼いでもらわないと企業側は困るのです。

この「人件費を考える上で売上高がどれだけ必要になるか。」参考となる指標に、限界利益に占める割合を示す『労働分配率』があります。

詳細→ 人件費率より労働分配率や人時生産性、売上高を考えてみては如何

先例に倣い、社会保険料など付随費用込みで月収40万円、限界利益率が60%で労働分配率が50%だったとします。

労働分配率50% = 限界利益の50%が人件費ということになるので、

月収40万円 ÷ 0.5(50%) = 80万円

80万円の限界利益(粗利、マージン)があれば、労働分配率50%を保持できた状態で給与を支払えるとなります。

『限界利益』詳細 → 損益分岐点の計算方法を簡単理解。簿記にも商品販売にも役立てよう

売上高はどうでしょうか?

限界利益率が60%なので、

月収40万円 ÷ 0.6(60%) = 約67万円(666,666…)

『粗利率』詳細→ 利益率や粗利益や原価、値入。計算方法や違いを簡単に理解と把握。

67万円の売上高があれば、社会保険料など付随費用込みの月収40万円を達成できるということです。当然、売上高が上回らなければ、マイナスです。

まとめ

人件費は、企業にかかる費用として大きな項目の一つです。ここでは、単純な計算として行ってきましたが、自身の給与以外にも社会保険料等の付随費用が雇う側にはかかってくることをまずは理解しましょう。

しかし、説明してきたことを考えてみると、厳しい言い方ですが、自身が”黒字””赤字”どちらの人材かがわかります。赤字だからといって、”クビになる”と直接的なものではなく、採用は、投資の意味合いもあることを認識しましょう。

また、企業の利益体質によっても違ってきます。特に企業して間も無く、人を雇おうとする際は、これらも考慮しつつ、外注なども検討することをお勧めします。

スポンサーリンク







-ビジネス

 

※当サイトは広告が掲載される場合がございます。